L150S ムーブ 電子制御ATの落とし穴? MT交換と診断する前に試したい点検方法紹介

今回はAT不具合の修理です。 急に走行中のフィーリングが悪くなって運転してて怖くなったので診て欲しいとの問い合わせがありました。保険会社のレッカーサービスと代車特約の案内をして搬入です^^; 問診の内容からAT本体の内部不良だろうと推測しながら試乗に行きますが、やはりショックの感じや走行時のフィーリングの可笑しさからAT本体の内部異常(バルブボデー等)と試乗だけしてろくに点検もせず診断しましたが、大きな落とし穴がありました。

現象の確認

  • シフト操作 P→R P→D P→2 P→1 全てのギヤへシフトした瞬間「ドン!」となる
  • 加速中40km/hを超えて来ると何とも言えない無力感から失速。それを抜けるとググッと加速するが60km/h以上出ない
  • 上記速度からアクセルOFFするとまるでフットブレーキを踏んでいるかの様な力強いエンジンブレーキ力
  • O/Dスイッチを押すとメーターに反応あり。エラーコードの出力は無し

↑こんな感じでした。ある程度の経験を積んだメカニックならAT本体の不良であると判断すると思う内容ですよね?(笑)

概算修理見積もりで10万以上となれば年式・走行距離・修理代・ボデーや内装のやれ具合を総合的に判断して、新たに車を検討した方が経済的な面と気持ち的な面でもメリットがある旨を伝えて営業マンが猛アプローチするものです。しかしながら、時代の流れが速い昨今ではその従来のセールストークには騙されません。修理の依頼を頂いたため、快く引き受けました(^_^)v

費用を抑えるために中古のAT本体を選択

AT本体の交換要領は

  • バッテリーを外す
  • ATオイル・冷却水を抜く
  • マフラーを取り外す(外せない場合はO2センサーを抜く)
  • ステアリングナックルを分解してドライブシャフト左右取り外し
  • エンジンマウントリアASSYで取り外し、スターターを外す
  • ミッションに付いてるシフトケーブルの切り離し、トルクコンバータの締結ボルト取り外し
  • ラジエータホース・ATオイルホース・各センサーコネクター・アース線の切り離し
  • ATケース締結ボルト・エンジンマウントLH(ATマウント)取り外し
  • ミッションジャッキ等で据えてAT本体の取り外し(バール等でエンジンとATの結合部をこじる)

大体こんな感じでAT本体の交換を行います。文字ばかりですいません(;’∀’)

↑こちら参考画像ですが、ラジエータホース・ATオイルホースが外れてもう少しでAT本体が外れそうなところです。

↑こちらは外れてエンジン側になります。なかなかお目にかかれない部分。この機にE/Gリヤオイルシールの交換も同時に行います。ミッションの締結に緩み防止剤が塗られていますね。

中古ATミッションの換装が完了。試乗するも、、、

組み上がって油脂類を補充しATオイルの調整に入ります。E/Gを始動し、ドキドキしながらギヤをシフトすると「ドン!!!」

、、、あれっ??? なんだか嫌な予感がするぞ(-_-;)

気を取り直して試乗へ向かいます。「さっきのは気のせいだ」そう自分に言い聞かせながらドキドキしながら工場を出ます。

試乗コースへ出て加速します。、、、調子良く加速してるな。うんうん。大丈夫(^_^)v と思ったのは束の間でした(;’∀’)

シフトショックといい、走行のフィーリングといい、修理前と変わっていなかったのです。そう、誤診をしてしまったのです( ;∀;)

気を取り直して再修理。システムの見直しからスタート

ヤマ勘の様な修理をした事に深く反省し、一度システムの仕組みに目を通してみる事にしました。故障診断の基本中の基本ですよね^^; 構造が理解できていないと修理なんてできっこありません。車の修理に限った事でもありません。

↑どうもソレノイドへコンピューターから信号を出しているみたいです。シフト操作をするとコンピューターが認識してソレノイドに信号が送られる。タービン回転・アウトプット回転がコンピューターに入力されると、それに基づいてソレノイドに出力。といったシステム概要でしょうか。いわゆる電子制御のATの様です。

今回AT本体と各センサーは中古で交換しているので正常と判断すると残るはコンピューターになりますが、次は何があってもミスれません(;’∀’) 別のアングルから点検のコンピューター不良の根拠が欲しいですよね^^; じっくりと長考して隅々まで資料に目を通します。

ATコンピューター不良と推定。考えに考えた根拠となる診断方法とは?

ではここからですね。システムを把握するという事はシステムを利用するとも言えますね^^

「フェイルセーフ」という言葉はご存知でしょうか? 車両に異常があるとコンピュータが感知した場合に車両を保護するために出力を制限するモードがあるのだそう。

↑この「シフトポジションが読めない」ってのが、保護機能として通常のDレンジ変速制御を行うってのでまさにコンピュータの指示が悪いのか、AT内部に不具合があるのかの切り分けが出来そうな感じがしますよね???

これでシフトショックが消え、スムーズに加速・シフトアップしたらATコンピュータの指示が悪くて、フェイルセーフに入れても変化がなければAT内部の異常であると推定出来ますよね!?

いざ、エンジン始動してニュートラルスタートS/Wを抜いて「フェイルセーフ」に入れてみると、、、、

P→D=「・・・トン♪」(^-^)b

シフトショックなし!(笑)それではおそるおそる試乗へ!

お店を出発して30秒。滑らか過ぎるシフトアップと加速にニヤニヤが止まりません。やりました!(^-^)

これで悩みに悩み抜いた推定が的を得ました^ ^

ATコンピュータの不具合」で間違いないです。

今回の感想・まとめ

その日のうちに中古ATコンピュータを手配し、交換。しっかり治った事を確認しながら試運転して無事納車です^^ やはり、誤診をして学ぶ事は多いなぁと改めて思った一件でした。それと故障診断をする上でいつもいつも大事だなぁと思うのが「そのシステム・構造を頭に入れる」事です。今回は極めてレアなケースではありましたが、今一度安易な診断をしない様に注意して臨まなければならない良い経験になりました(ー ー;) 良かったら参考にして頂けたらと思います!

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